食べ物のなかにどれくらい砂糖がふくまれているかが、キイポイントになります。
2015年3月にWHOは砂糖摂取についての新ガイドラインを発表しました。砂糖を1日の摂取量の5%以下にする事が望ましい、とするもので、ティースプーンで言えば6杯分以下です。
当時の新聞では、肥満や高血圧や糖尿病への影響が注目されたようでした。缶入りソーダ1本でティースプーン10杯分お砂糖が入っているので、このガイドラインは全く現実的ではないのではないかとのコメントが紙面を飾りました。
そこで、実際にWHOのホームページを見てみることにしました。
てっきり、高血圧、糖尿病等のことが詳しく説明されているのでは、と思ったからです。
ところが、現実のホームページで、WHOが現状の砂糖摂取で問題にしている生活習慣病は、『肥満とムシバ』でした。
砂糖のガイドラインで示されている以上の摂取が、直接にムシバに関係していることを明確に指摘し、それは付随的な問題ではなく肥満と並ぶ全世界的な課題であることを宣言していることに改めて衝撃を受けました。
たまたまこの当時にジュネーブにあるWHO本部に派遣されていた日本人若手研究者の先生のお話を聞く機会がありました。その先生曰く、この声明においてWHOは、肥満と同等に歯科の問題を重視していることを現場で肌で感じることができたと報告されました。
そして、歯科の医療費が、世界の医療費全体の10分の1以上を占めていることはムシバ罹患率がきわめて高いことと並んで、医療経済上大いに問題視されていることも指摘されました。
この1日の砂糖摂取量ティースプーン6杯以下という新ガイドラインには、はっきりとしたエビデンスがあると表明されています。
ここで再度思い出していただきたいことは、ムシバ菌が砂糖を原料にして作り出すベタベタ物質=グルカンのことです。甘いものを食べたらすぐブラッシングすればいいや!と考えている方はいらっしゃいませんか?
残念ながらそれは、まったくの期待外れです。
ちょっとしたブラッシングでは、このベタベタ物質は容易に除去することはできません。
よく患者様が自分はよく歯ブラシをしているのにムシバになっちゃいました、とおっしゃるのを耳にします。診療の現場で日々患者様がムシバで苦労している姿を見ている私は、この新基準がまったく妥当であることを実感しますし、ムシバ菌に対して兵糧攻めとして、砂糖の摂取量を制限することがどうしても必要であることをご指摘せざるをえません。