歯のシンケイを治療する前にはまったく痛まなかったかあるいは僅かな痛みであったものが、治療を受けた途端に急に腫れたり痛み出したりすることをフレア・アップと言います。
患者様にとっては、受診している歯科医師に対する信頼を損なうたいへんな出来事です。
根管治療の専門の教科書にもフレアアップが1章を割り当てられているくらいですから、根管治療の専門家にとっても重大なことがらです。そのような事情を端的に物語るものとして、次のようなエピソードがあります。
30年くらい前のことなのでちょっと古いのではないか、とお考えになる方もいらっしゃるかもしれませんが、そのわけは後にふれますのでご容赦のほどよろしくお願い申し上げます。
アメリカの根管治療の大御所であったネードルフが、専門家向けの講演でこの現象を避けがたく悩ましいとして、次のように述べました。
「典型的な無症状の感染根管治療をいつも通りに行ったちょうどその夜、患者様から予期せぬ電話があなたにかかります。『今日はどんな治療をしたんですか? 一体、私に何が起こったんですか??』見ると、急患で再来した患者様の顔は腫れ上がっている。何にも思い当たる節がないのに・・・・・・・・・・。
こんな経験をお持ちではないですか?
『ない』とおっしゃる方は、根管治療をしたことがないか、嘘をついておられるかどちらかでしょう。
まさに、これがフレアアップです。ところで、この専門家の動転ぶりは異常だと思われませんか??
確かにこの情景は、異様です。何故でしょうか。それは、当時このフレア・アップの原因がはっきりしなかったからです。「何にも思い当たる節がないのに・・・・。」と、慨嘆していることからも明らかでしょう。
今日では、この原因はだんだんとわかってきました。
難解な細目は別にして、その主要な原因は細菌感染と我々自身の体の反応です。
そのため、細菌感染をターゲットにする根管治療によって、このような患者様の不快症状は激減します。
当院では、このような患者様の不快症状を皆無にすることを日々の臨床において心がけております。